健康に気を使っている人も遺伝子組み換えに関しては寛容というか無頓着である人が多い気がします。それは日本では表示義務があり、普段裏面ラベルを確認する人もそのほとんどで「遺伝子組み換えでない」という表記を目にしており、気にする必要性があまりないからではないでしょうか。しかしながら、どうやら内実は違うようです。
私も自身が購入するものの殆どは「遺伝子組み換えでない」が記載されていましたし、表示されていないものはそもそも遺伝子組み換え技術の対象になっていないものだとばかり思っていました。
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そもそも遺伝子組み換え商品は体に悪いのか?
漠然と「遺伝子組み換え」は問題であるという認識はありますが、まず「遺伝子組み換え」が本当に危険なのかどうかを調べてみました。
体に悪い、悪くないの定義や検証は非常に難しい。
健康に関する諸説の確認・検証は非常に難しいものです。人体への影響を調べるものですから真に言えば人体実験が必要です。そして人体実験が仮に可能だったとしても食べて消化するまでを見ればいいわけではないことくらいはお判りでしょう。多数の合成添加物の問題と同様、人類が近代で開発してきた歴史の浅い食材は世代を超えて確認することができません。また、その他の要素が複雑に絡み合っているので原因を特定するのも難しいでしょう。
動物実験においては、発がん性やホルモン異常などの数々の問題点を指摘する実験データが時折発表されますが、そのたびに信頼性に乏しいなどの理由でうやむやになります。国、特に日本では企業利益が優先されると欧米諸国からも言われているとおり、国が認めたからと言って安易に信頼していいかもわからない時代です(時代は関係ないのかも知れませんが)。
国は企業利益だけではなく、その他にも「遺伝子組み換え」を認めざるを得ない理由がいくつか存在するはずです。例えば、それを認めないと食料供給が追い付かないといった理由が容易に想像できるところですね。健康という物差しは摂取するものによっても個人差がありますから、パーフェクトに問題がないというのは安全と認められている食材でも難しいでしょう。従ってある程度の基準で閾値を決めています。ようは我々がその決められた基準に安易に従うだけでいいのかということですね。
私は食材に関しては個人的にはもう少し、許容基準を厳しめに設定しています。
遺伝子組み換えは体に悪い:否定派の意見
所謂、動物実験を行い腫瘍が出たという趣旨の実験結果から否定する意見が出ています。
頭と同じくらい巨大な腫瘍のできたネズミ。2012年9月、フランス、カーン大学のセラリーニ教授らの研究チームが発表した実験結果は、世界に衝撃を与えた。これは市場に広く出回っている除草剤耐性遺伝子組み換えトウモロコシ(NK603)をねずみに食べさせるというもので、実験に使われたねずみは全部で200匹。ねずみの寿命に相当する2年間の歳月をかけて行われた綿密な実験だ。
GM作物の大半は「除草剤耐性」で、大量の除草剤をかけて栽培される。そのため、なにか健康に悪影響が出た場合でも、それが除草剤の影響なのか、それともGM技術そのものの影響なのか、ということがはっきりしにくい。それを見極めるために、上のような細かなグループ分けが行われたんだ。
(中略)結果は両方ともクロ。つまり、除草剤も健康に悪いし、除草剤をかけないで育てた場合でも、GM作物は健康に悪い、ということがはっきりした。
(中略)この実験は外国では大きく報道されて大問題になった。遺伝子組み換え推進派はこの結果の否定にやっきになっているが、セラリーニ教授らは理路整然とそれに反論しているよ。
この他「モンサントの不自然な食べ物」という映画では、遺伝子組み換え食品を与えられたラットが奇形になるというショッキングな映像が流布している。いずれにしても、国が表示を義務つけている、企業が表示義務のない食材にも記載しメリットとしている、アメリカでの忌避ブームなどから避けて悪いことはありません。
遺伝子組み換えは体に悪いは嘘:肯定派の意見
上記、否定派のセラリーニ教授の論文についてその検証を行い、有効性を否定しています。同論文はSTAP細胞の論文と同じ位置づけにあるらしいです。
「この論文はどこがおかしいんだろう?」と調べた結果、やはり方法論が間違っていたんです。ガンについて言えば、この実験で使ったネズミは、年を取ると自然にガンが出てくる種類で、遺伝子組み換えトウモロコシを食べさせたネズミと、自然に育てたネズミでは、ガンの出来方がほとんど変わっていませんでした。だから、写真に写っていたのは、自然に出来たガンだろうと、専門家は見ています。そのため、この論文はSTAP細胞と同じように、それを出版した会社が取り下げてしまいました。
出展:BLOGOS
論文は独り歩きするので気を付けたいところです。
大事なことは論文が1つ出たら、その内容がすべて事実ということではないんです。
科学の世界では、論文が1つ出ると、その論文の中身が本当かどうかの検証実験を行います。これを何度も何度も繰り返して、論文の中身が正しいことが証明されていく。テレビ、新聞が大好きなのは、今までの考えと違う、みんなが「えっ!?」というようなニュースなんですね。ところが、科学の世界は検証の積み重ねですから、「えっ!?」というものは、ほとんどないんです。(中略)心理学の問題が大きく関わるんですが、人間は「危険だ」という情報と「安全だ」という情報があった場合、どちらを信じるのが自分の身にとって安全かを考えます。そうなると、絶対に危険情報を信じるほうが、危険から逃れられるわけですね。
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これは他のテーマにおいても言えることですね。非常に大事なことだと思います。
その他、本題の遺伝子組み換えについては以下のように論じています。
- 遺伝子組み換え作物の安全性は、非常に厳しく調べられているので、安全なものだけが流通しているという事実があります。 一方、遺伝子組み換え作物かどうかを知りたいという消費者の要求もあります。「遺伝子組み換えは安全」と言われても、なんとなく気持ちが悪いと。だから、「遺伝子組み換え作物って、ちゃんと表示してよ。」ということで、2001年から表示制度が始まっています。
- 国連機関を始めとして、安全性に問題があるから禁止している国は1つもありません。安全なものだけが流通しているという事実があります。
- Q:「20年程度の実験の長さで本当に大丈夫なのか」という心配をされている方もいると思うのですが。A:よくそういうご心配がありますが、一番心配なのは、ガンを起こしたり、奇形を起こしたり、あるいは孫や子の代に何かおかしなことが出ないか、ということでしょう。これを調べるのは、そんなに難しくないんです。遺伝子に変化が起こっているかどうかを調べればいいのです。遺伝子に一切変化がなければ、ガンにもならない、奇形にもならない。孫や子に起こるはずがないわけですから。
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更に既に我々の生活に遺伝子組み換えは日常的に入り込んでいることを告げています。
- 1つ付け加えるとすると、日本が使っている家畜のエサのほぼ100%は遺伝子組み換えです。だから、「遺伝子組み換えはイヤだ」と言った途端に、日本の家畜はエサが無くなってしまいます。
- 我々が食べている食用油のほとんどが遺伝子組み換えです。トウモロコシも菜種も大豆も遺伝子組み換えのものを輸入して油を作っています。油には、「遺伝子組み換え」の表示がないので、私たちは知らないうちに、遺伝子組み換え経由の油を毎日食べている。だから、遺伝子組み換えをすべて止めたら油もなくなってしまう。それが日本の食生活の実態
- 「あまおう」という苺の品種があって、私も大好きなんですが、原種と言われている木苺や野苺というのは、食用に耐えられないじゃないですか。そこで、一生懸命交配をすることで、「あまおう」などの品種を作るわけですよ。これもある意味では、遺伝子組み換えの作業に近いものがありますよね。
「日本では遺伝子組み換え食品は全然流通していない」は大きな勘違い。遺伝子組み換え商品の流通状況とは?
日本は「遺伝子組み換え作物」の消費国としてはトップ、日本は非常に多様な遺伝子組み換え作物を輸入しており、その量は年間1600万トンにのぼるらしいです。原材料欄に「植物油脂、油脂、マーガリン、ショートニング、ホイップクリーム」等の表記を見つけたら、まず遺伝子組み換えだと思ったほうがいいでしょうとのことです。
遺伝子組み換え商品の表示義務の抜け道とは?
非常に細かい話になりますが日本では、遺伝子組み換え食品を販売する際には、その旨を表示しなければならない、と定められている。けれども、いくつかの抜け道があるといいいます。
- 組み換えDNA、およびそれによって生成したたんぱく質が残らないものには表示義務がない
- 「主な原材料(原材料の重量に占める割合が上位3番目以内で、しかも原材料に占める重量の割合が5%以上)」にしか表示義務がない
- 5%以下の意図せぬ混入には表示義務がない
一例として醤油が挙げられます。表示義務がありませんので、遺伝子組み換えの大豆を原料に使っている可能性があるということです。ただし国内では遺伝子組み換え大豆は商業栽培されていないので、原材料欄に「国産大豆」とか「大豆(国産)」または「大豆(遺伝子組み換えでない)」などと書いてあれば対象外です。表示義務はないものの醤油は「大豆(遺伝子組み換えでない)」と表示しているものが多くなり、これは業者が遺伝子組み換え技術への気持ち悪さを晴らすために自主的に記載しています。どちらかというと遺伝子組み換え大豆を使った醤油は、麺つゆやポン酢醤油、焼き肉のたれなど、醤油を含む調味料に重点的に使われている可能性があります。
遺伝子組み換え商品の外食産業での使用状況
外食産業では、価格の安さが重視されます。一部の高級店(拘りのある、それを実現できるという意味)を除き、揚げ物の揚げ油のほとんどは、遺伝子組み換え原料の油と言えるでしょう。
結論
遺伝子組み換え肯定派の意見は東京大学名誉教授の唐木さんの話を抜粋しましたが説得力があります。そうなるとそこまで心配する必要はないような気もしています。冒頭で記載した通り、私自身が購入するものの殆どは「遺伝子組み換えでない」が記載されていますし、生産者を信頼して選択もしているのであえて表示の抜け道や非表示のものを不買とする結論には達しません。少なからず摂取してしまうのは仕方ないことですし、そのために可能性のある食材を止めることは精神的にも作業的にも好ましくありません。
結局は自分の基準をどこにおいて、どこまでの説を信頼し、どこまでを疑念とするかですね。結局このような議論は行き着く先は、食べたくない人=食べない。気にしないという人=食べる・買うという、個人の選択肢ですね。