住まいに関する話題は、余程裕福な世帯でもない限り人の一生において最も高額な消費であり、それだけに身を滅ぼす結果を招きかねない重大な話題であることは間違いありませんね。一昔前であれば(今もそのような風潮が残る場合もありますが)購入して一人前という時代で悩むことなく購入を決断していた層が大半ということでしたが、現在は多くの人が購入か賃貸かという大きく意見の分かれる選択をしています。それだけにこの議論はいつまでたっても白熱したものとなっていますね。
このトピックに関しては、客観的にいくら調べても個人の置かれた状況、理想、拘りなどによって大きくブレがあるものですから、もう少し的を絞って具体的に私が検討した内容をもって事例紹介したいと思います。尚、私は本業とは全く関係ありませんが宅地建物取引主任者及びFP2級の資格保持者として相応の知識がある前提があります。
Contents
結論
いきなり(持論)結論から書き出します。
購入するなら戸建てかマンションか?
私はもし買うなら戸建ては絶対選ばずマンション(4階以上10階以下)にします。これにはいくつか理由がありますが以下が主なものです。
- 都内で戸建てを購入するには立地条件がマンションに劣る➡生涯において最寄り駅までバス移動や徒歩15分以上は厳しい
- セキュリティ及び災害時の対策面➡1階に対する諸々の不安(盗難、浸水、虫、土砂)、耐震性
- 庭付きはマンション1階でも用意できるうえ、庭付きのメリットが感じられない➡寧ろ近隣に公園があればそちらの方が重要
- 戸建てのメンテナンス領域の広さ➡室内はメンテナンスできても室外まで手が回らないと思われる、根本部分の修繕などに対する対応に手間がかかる
マンションは購入するか、賃貸するか?
次にマンションを購入するか、賃貸とするかですが今まで同様賃貸を継続する方針です。理由は以下になります。
- ローンを払いきれる保証があまりない➡現年収の向上ばかりか維持も定年まで継続できるかわからない世の中の状況を勘案
- 住宅は資産ではなく負債だと思っている➡売ることを想定したマンション選びは趣旨に合わず、費用を含めた修繕の問題が大きすぎる
- 売却の難度が高い➡売却しようとしてもできるマンションは限られ、売却までも多大な時間と労力を要する
- 人の決定に左右される将来の支払いリスクが存在する➡大規模修繕などを考えるとマンションは上下両隣、同じ棟の住人は他人ではなく運命共同体の一部
- 損得勘定で試算しても賃貸と購入でそれほど大差がない➡購入の場合の管理費・修繕費が老後まで続くことを考えると
- 同じ住まいに数十年も住めない➡ある程度新しい環境に常に身を置きたい
- 居住地を縛られたくない➡今後数十年間を過ごす地域を絞れない、数十年間で様変わりする日本(東京)の状況が読めない
このあたりの結論に至った内容をもう少し深堀して紹介したいと思います。
マンション購入をしない理由とは?
上記の理由の中で最も懸念として挙げられるのが、将来の状況が非常に読みづらくなっているという現実です。一昔前のように、日本経済は順調に伸び、就職すれば年齢を重ねるにつれて右肩上がりで給与は上がり、退職金も十分に貰える時代は終焉を迎えました。我々世代が親の世代の人生を踏襲することはまず不可能です。
前提:マンションを購入する場合のポイント
各理由を掘り下げる前に、私のマンションを仮に購入するならというポイントを挙げておきます。この理想が低ければ当然価格も安くなるわけで、以下に挙げる理由のいくつかは随分薄れるからですが残念ながら私の理想はそれほど低くはありません。
詳しくはこちらのエントリーを参考にしていただければと思いますが、列挙すると以下となります。
- 最新設備(食器洗乾燥機、室内乾燥機、セキュリティ、ディスポーザ、24hゴミ出し可能、可能であれば玄関ポーチ)➡築5年以内の大規模マンションが相当
- 部屋の広さ(80㎡以上)➡首都圏では3LDKの間取りでもギリギリ程度
- LDK専有面積(20帖相当)➡個人的願望で最も過ごす時間の多い空間を重視
- 首都圏へのアクセス(東京西部もしくは神奈川県に限る)➡夫婦双方の実家までの距離の問題
- 駅までの距離はバスを使わなくていい程度(徒歩15分以内)➡もちろん駅に近くても構わない
- 徒歩3分圏内に大きな公園➡子供の外遊びに有益な環境
- 小学校・中学校学区➡将来を考慮
- 病院などの充実
- 4階以上10階以下
現在、賃貸住まいですがこのうち2及び6以外は満たしているので満足感はまああります。この残りのピースを埋めるとなると賃貸で叶えるのはなかなか難しく、購入も頭をよぎるところですがこれを満たす価格帯は四千万円台後半、およそ五千万円といってもいいかも知れません。
理由1:ローンを払いきれる保証があまりないから
これは少し言い過ぎの感がありますが、つまりはそういうことです。現在の賃料と比べて同等もしくは月々の支払いが低くなるとしても、一般的なローン期間である35年間の毎月において常に支払いを行う為の収入を得る保証がないからです。私の場合は幸いにも現状では充分に右肩上がりで来ましたが、ここからの伸びは微妙であり下がる可能性も十分にあり得ると感じています。
35年を組めば、現在の平均的定年を超えますので繰り上げ返済などを行わない限り、終盤が非常に厳しいものになりそうです。
ちなみに上述の私の要望を満たす五千万円程度のマンションを35年頭金なしで返済しようとすると、変動金利0.875%で計算して月々11万円程度。ボーナス払いで年間24万円程度です。これを高いとみるかは人それぞれですが、我が家の現在の賃料からすればリーズナブルです。しかし、ここには2つの落とし穴があります。①変動金利であること=金利上昇リスク②管理費・修繕費が入っていないことです。
①多くをここで語りませんが、史上空前の低金利がこのまま推移するとはどう考えてもあり得ません。支払いは変動金利でするとしても固定金利分は余裕を見ておく必要があるかと考えています。②に関してはローンの支払いとは別に毎月かかるもので、2万円程度はするかと思います。結局金利を考えなくても月額の総計は13万円程度に膨らみます。
理由2:住宅は資産ではなく負債だと思っているから
上記のように、マンションを購入すると管理費・修繕費はローンとは全く関係なしに毎月かかってきます。常に2万円程度かかるだけでも手痛いですが、修繕費においてはこの2万円がさらには通常経年するに従い、増額となることが通常で下手すると管理費と合わせて5万円程度にまで膨らむケースもあると思います。もはやこれは所有しているだけでお金が飛んでいく負債と考えてもおかしくありません。それなのに一般的には”資産”なので年15万~20万にもなる固定資産税もかかる。どんどん経年劣化が進む中で支払いが増えていく、これを覆すメリットがあるのでしょうか?
また、資産というからには換金できる必要があります。終の棲家で売却を全く考えないのであれば問題ないですが、いつか売却をするのであれば「その時に売れるのか?」を考える必要があります。これも今後は資産性を当初から念頭に置き立地を重視しなければ相当厳しいでしょう。
いわゆるマンション購入支持派が推す、「賃貸は何も残らないが購入は資産として残る」「今の家賃を払い続けるのはもったいない。」論は私から言えば「老後になっても広い部屋を持て余し掃除の労力がかかり、経年劣化の進んだ住まいに、修繕費を払いながらがんじがらめにされる負債」と位置付けられます。
「返済が終われば住宅が自分のものになるので購入した方が得で、家賃を払い続けるのはもったいないから購入する方が良い」と見えてしまいそうですが、そうではありません。
出典:マネーの達人 住宅は賃貸と購入どっちがいいの? 「家賃を払い続けるなら購入がお得」が危険な理由
理由3:売却の難度が高い
売却するつもりが購入時にはなかったとしても、長い人生には何が起こるかわかりません。教育方針の関係や転勤その他の理由でやはり売却して新たな住処を探すことになるという例も10年程度から多くなってくるようです。その場合に果たしてスムーズに売却できるのかという問題です。これからの10年-20年は人口減少時代に入り、国内の状況も大きく変わるでしょう。災害や治安面という外的変化で住んでいる環境が著しく変化する可能性もあり得ます。
特に人口減少に伴う、住宅需要の低下は余程条件が良くないと見向きもされない状況に陥ると考えられます。特に「終の棲家」でマンションを購入する場合、将来の売却のことは一切考えませんから売れない負債を抱えることにもなりがちです。また売る際には空室にしておかないと候補者が内見しても購入意思が削がれますから、売れるまでの仮住まいの用意もしくは早々の新居への引っ越しが必要になります。これも相当の負担です。
参考:9ヶ月かかってようやく売れた今、マンションはもう買わないと決めた5つの理由 by EX-IT
理由4:更に他人の決断による将来の支払いリスクが存在する
これは少し説明が必要ですね。皆さんはマンションを買うとき隣人や上下の人、または同じ棟の人をただの他人だと思っていますか?戸建てと決定的に違うことは、ただ壁が離れているかどうかの違いだけではないです。普段はそれほど違いを感じないと思いますが、いざマンションを購入して10年も経ってくると修繕が必要になってきます。この時の費用は毎月積み立ててている修繕費から充当されますが補修内容によっては積み立てがたりず追加の出資が必要になる場合があります。この修繕費がきちんと積み立てられていれば問題ありませんが時として、マンション購入に無理がたたりローン支払いが滞るのと同じように管理費・修繕費を滞納する人がでてきます。そうするとその人のことはさておき、不足分を残りの住人で補わなくてはなりません。ここに追加の支払いリスクが存在します。
そんな人殆どいないと思うでしょうが、事実増えているそうです。でも、この件に関しては支払いリスクより修繕が必要なのに住民の一定数の合意が得られず、補修ができない、資産価値を低下させてしまうリスクの方があるでしょうか。高齢者が多いマンションでは、まさしく終の棲家ですから住めていればよし、追加の修繕など必要ないとはねのけられてしまうことも大いにあります。いずれにせよ、マンション住民は運命共同体。どんな人が来るかもわからないのにそういう特性を持っていると考えられます。
理由5:損得勘定で試算しても賃貸と購入でそれほど大差がない
これはよく言われることですが、賃貸の前提条件と購入の条件が結構ちぐはぐだなと感じるシミュレーションが多いです。これに関しては徹底的に自分のケースに置き換えてシミュレーションするに限ります。私の場合、前述の理想を満たすためのマンションを購入する場合の50年間の試算表と賃貸継続で過ごした場合の50年間のシミュレーションを細かに設定してみました。ネット上では管理費や修繕費、固定資産税などは不変のものとして設定しているところが多いですが、管理費・修繕費は5万程度/月まであがることを想定しました。
子供が独立して所謂定年頃になった例の賃料の下がり幅は一般のシミュレーションより大きくしました。我々の場合は勤務地=東京?にこだわる必要がないこと、人口減少からくる需要減に伴い家賃は低くなることを鑑みるとそれほどまで必要ないのではと考えているからです。
このようにとことん自分の将来を考えて、試算すると我々の場合賃貸の方が安い計算になります。賃貸の場合はもちろん2年の更新、最高10年内での引っ越しに関連する費用、団体信用生命保険代わりの生命保険料を盛り込んだ結果です。
理由6:同じ住まいに数十年も住めない
これは個人的な意見ですが、持ち家で自分の好きなようにカスタマイズしても飽きるし、痛みはいくつも出てくるし、通常の掃除では行き届かない汚れがたまってきます。これをリセットしたい衝動に駆られるのです。また、子供の成長とともに何が必要なのか?いつ家を出ていくのか?が明確ではない部分もあるので同じ広さ・間取りですみ続ける合理性が見当たりません。
理由7:居住地を縛られたくない
理由6でも述べましたが明確でないのは家の中だけでなく、周りの環境も同じです。理由3でも述べましたが、これからの数十年はものすごいスピードで環境が変わるものと認識しています。自身の仕事も大きく変わり、勤務地すらどうなるのかもわからないです。もしくは変わらなくても、在宅が一般的になり勤務地で居住地を選ぶ必要がなくなるかもしれませんし、各自治体で人気に傾斜がかかり、税金が高すぎる街や治安が悪すぎる街に変貌する可能性だってあります。その際に素早く自由に動ける状態にしておきたいと思うのです。
以上、十分すぎるくらいの理由を列挙しましたが、これを覆すメリットがあるでしょうか?
例外
上記はあくまで私が東京都内勤務であり、東京近郊に住む必要性がある前提です。これがもう少し自由になり他の地域で同様の物件が例えば半額で買えるのであれば話は変わるかも知れません。
またリセールバリューが100%を超える都内駅近物件が購入可能(以下のような事例)なら購入はアリです。ただ、子供も二人いる我が家のステージにおいてリセールバリューが100%と言わずとも高止まりしていて、今後数年住むのに適した物件が手ごろで買えるかと言われれば厳しいので難しい選択です。手元資金に余裕があればいいのですが。
築20年のマンションをだいたい3000万円で買って、それに5年住んだあと、3000万円で売りに出したら、売れた